ニュージーランドのプケクラ/タイアロア岬で、トロアの幼鳥たちが大海原へ飛び立ちました。トロアはキタシロアホウドリの現地名です。翼を広げると最大約3mになる海鳥が、巣立ち後は海で平均5年を過ごします。
自然保護省(DOC)は2026年9月8日、今季最初の巣立ちを発表しました。ライブカメラ「Royal Cam」で見守られてきたアウフェオも出発しています。長い旅を送り出したのは、親鳥の子育てと、繁殖地を守る人たちの地道な仕事でした。
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巣立ちまで約8か月
タイアロア岬は、ニュージーランド南島のダニーデン近郊にあります。キタシロアホウドリが本土で繁殖する場所は世界でここだけです。島々にある繁殖地とは違い、人が継続して様子を見守れる場所でもあります。
この岬では1937年から個体の調査が続いてきました。現在はDOCだけでなく、地元のマオリの組織やダニーデン市などが共同で繁殖地を管理しています。鳥を守ることと、その成長を記録することが並行して積み重ねられてきました。

ふ化から巣立ちまでは平均約240日、約8か月に及びます。親鳥は交代で海へ餌を取りに行き、ひなを育てます。餌を運ぶ間隔が長くなり、体重が十分に増えない時には、レンジャーが補助的に給餌することもあります。
海鳥にとって、地上の暑さも難敵です。暑い日の散水で巣を冷やし、ふ化時にはハエによる被害を抑える対策を取ります。卵をふ卵器へ移す対応も含め、巣立ちの前には目立ちにくい手入れが続いています。
飛び立つ直前の幼鳥は、風に向かって翼を広げ、地面から少し浮く練習をします。下の映像は8月30日の飛行練習です。コーネル大学鳥類学研究室の9月8日更新では、アウフェオは9月4日に生後225日で巣立ちました。その瞬間はカメラの範囲外でした。
数字で見る長い海の旅
巣立った幼鳥は、まずニュージーランド東岸で餌の取り方を覚えます。その後は太平洋を約9,000km渡り、南米チリ沖のフンボルト海流へ向かいます。巣から海へ出る短い飛行が、地球規模の移動の始まりになります。
| 段階 | 時間の目安 |
|---|---|
| ふ化から巣立ち | 平均約240日 |
| 海から繁殖地への帰還 | 平均約5年 |
| 繁殖を始める年齢 | 約8歳から |
「海で5年」は、すべての幼鳥が同じ日に戻るという意味ではありません。DOCの季節案内では、海で過ごす期間を4〜10年と説明しています。また、繁殖地へ帰ってきたことと、親になったことは別の段階です。

この図では、幼鳥が海へ出て戻るまでを追っています。親鳥が子育てを終え、1年ほど海で休んで戻る周期とは異なります。10月に岬へ帰る成鳥を見ても、9月に出発した幼鳥がもう帰ってきたわけではありません。
子育てに成功したつがいは、通常2年に一度、1羽のひなを育てます。巣立ち後の親鳥も海へ出て、次の繁殖に向けて体力を戻します。毎年たくさんの子を産む鳥とは違い、1回の子育てを支える意味が大きいのです。
次の季節を見守る
前のシーズンには、この岬で過去最多の38羽が巣立ちました。2026年9月8日の発表では、今季もその記録に並ぶことが期待されています。ただし、発表に今季の最終巣立ち数は載っていません。※38羽は前シーズンの実績です。
この繁殖地の様子だけで、種全体の増減まで判断することもできません。主な繁殖地はチャタム諸島にあり、New Zealand Birds Onlineは、岬の個体群が増えていても全体の傾向にはデータ不足があると説明しています。
成熟した個体数は約1万7,000羽と推定され、ニュージーランドでは絶滅のおそれがある種に区分されています。気候や生息地の変化、プラスチック汚染、一部の漁業活動など、海へ出た後にも課題が残ります。岬での巣立ちを見届けた後は、広い海で鳥を守る取り組みも欠かせません。
10月は次の繁殖期を迎える成鳥が戻り、巣作りを始める季節です。Royal Camの公式ページと季節案内を合わせると、ひなのいない草地にも次の暮らしが始まることが分かります。過去の飛行練習と、いまの岬の様子を見比べてみてください。
長い子育てを支える保全は、同じニュージーランドのカカポの個体数回復にもつながるテーマです。一度の成功を次の世代へつなぐ工夫を、あわせて読めます。
この記事は2026年9月8日の発表をもとに、10月13日に公式の季節案内などを確認して更新しました。
出典:DOC・巣立ちの発表(9月8日)/Cornell Lab・アウフェオの巣立ち記録/New Zealand Birds Online・種の解説。

