水田を耕し直すことが、生きもののすみかを取り戻す一歩になります。WWFジャパンは2026年8月、与那国島の住民や専門家と、水田再生と保護区設置を目指すプロジェクトを始めました。実施期間は2030年6月までです。
目指すのは、稲作だけの再開ではありません。水辺に戻ってくる水生昆虫の種類を調べ、島の自然と暮らしを一緒に支える計画です。9月3日の発表と詳細資料から、活動の経緯と、これから確かめたい成果を整理します。
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水田が生きもののすみかに
日本最西端の与那国島では、湧水が希少な淡水生物を支えています。ところがWWFによると、1960年以降、開発による土地の改変や耕作放棄で、水田や湿地が急速に失われました。水田跡が乾いた土地へ変わると、水を必要とする生きものの居場所も減っていきます。
なぜ田んぼを自然保護の対象にするのでしょうか。環境省の「重要湿地」では、与那国島の湿地・河川が、水鳥や水生昆虫、淡水の貝などの生息地として評価されています。樽舞湿原もその一つです。水の残る場所をつなぐことは、島にしかいない種を含む生きものの保全につながります。

一方で、今回の水田再生と、既存の湿原を守る取り組みは区別が必要です。WWFの資料が示す水田再生の候補は、耕作されなくなった水田跡地の2か所です。樽舞湿原全体を田んぼに変える計画ではありません。
活動の出発点には、島の未来を住民と考える対話がありました。2025年9月27日の与那国島のセミナーには約70人が参加。自然や地質の価値に加え、水田再生についても発表がありました。その後の協議を経て、翌年8月のプロジェクト開始につながっています。
数字で見る計画の時間軸
| 時期・対象 | 確認できる内容 |
|---|---|
| 2025年9月 | 島の価値と未来を考えるセミナーを開催 |
| 2026年8月 | 住民・専門家と保全プロジェクトを開始 |
| 水田跡地2か所 | 再生を目指す場所を資料で紹介 |
| 2026年11月頃 | 詳細と進捗の報告会を開催予定 |
| 2030年6月 | プロジェクトの実施期間の終わり |
期間は2026年8月から2030年6月まで。発表日だけでなく、この数年の間に何が変わるかを見る計画です。取り組みは大きく三つに分かれます。
- 水田を再生する:環境に配慮した水田へ戻し、水生昆虫の回復した種数を継続的に調べる。
- 生息地を守る:鳥類や水生生物を調査し、その結果を踏まえて法令等に基づく保護区の設置を目指す。
- 価値を伝える:祭りや食文化を通して、生物多様性と暮らしの結び付きを島内外へ伝える。

ここで大事なのは、作業の実施と、生きものの回復を別々に見ることです。田んぼを整備した面積だけでは、どの種が戻ったかは分かりません。継続調査で種類の変化を確かめるという方針が、計画を評価する手掛かりになります。
この先は進捗と調査結果へ
地元団体は、稲わらを豊年祭の綱引きの綱に使うことや、収穫体験を通じた食育にも期待を寄せています。水田は生きもののすみかであると同時に、人が地域の文化に関わる場でもあります。こうした活用がどこまで形になるかも、今後の報告で見たい点です。
2026年11月頃には与那国町で報告会が予定されています。10月15日時点で確認した公式発表には、具体的な開催日・会場・申込方法は載っていません。参加を考える場合は、WWFジャパンの発表と続報で最新の案内を確かめてください。
現時点では、再生後に増えた生きものの種数や、新たな保護区の指定面積は確認できません。まずは水田の再生状況、次に生きものの調査結果、さらに保護の仕組みへと、段階を分けて見守ると進捗が分かりやすくなります。
背景をもう少し知りたい方には、WWFが公開する2025年のセミナー録画があります。水田再生に向けた話題を含め、島の自然と暮らしの価値を考えた記録です。2026年に始まった活動の成果報告とは時期が異なります。
身近な自然を守る取り組みは、和歌山・下里の湿地保全でも紹介しています。規模は違っても、地域の人が手を入れ、変化を確かめ続けることが次の保全につながります。
この記事は2026年9月3日の発表をもとに、同年10月15日に公式資料を確認して更新しています。
出典:環境省「重要湿地 No.633 与那国島の湿地・河川」、WWFジャパンの発表・プロジェクト解説・セミナー開催報告(本文中のリンク)。

