世界のかんがい(農地に水を引くこと)と排水を扱う国際組織で、日本人が初めてトップに立ちました。国際かんがい排水委員会(ICID)の次期会長に、京都大学名誉教授の渡邉紹裕さんが選ばれたと、農林水産省が2026年10月19日に発表しています。
選ばれたのは10月17日、フランス・マルセイユで開かれた第77回国際執行理事会です。ICIDの創設は1950年なので、創設76年で初めての日本人会長になります。
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何が起きたか|ロシアの候補と争った選挙
農林水産省によると、会長選にはロシアの候補者も立候補し、渡邉さんが国際執行理事会により選出されました。任期は3年で、2026年から2029年までです。前の会長はイタリアのMarco Arcieriさん(任期2023〜2026年)でした。

日本は1951年にICIDへ加盟しました。加盟から75年目で、ようやく会長の座に就いた計算です。
ICIDとはどんな組織か
ICIDは、かんがい排水の科学と技術によって、食料や繊維の供給を世界規模で強めることを目的に、1950年に設立された非営利・非政府の国際機関です。本部はインドのニューデリーにあり、80の国・地域が加盟しています。
毎年の国際執行理事会に加え、3年に一度、全体会議や世界かんがいフォーラムが開かれます。今年の全体会議のテーマは「気候変動に直面する水と農業の強靭化」でした。
渡邉さんはどんな人か
- 京都大学名誉教授。ICID日本国内委員会の委員長
- ICIDの副会長と技術委員会の委員長を、2021〜2024年に務めた
- 気候変動作業部会の部会長を、2015〜2020年に務めた
- 国内では農業農村工学会の会長(2013〜2015年)などを歴任
つまり、長くICIDの内側で役割を重ねてきた人が、トップに選ばれたことになります。
数字で見る:日本が「かんがいの遺産」で最多
ICIDは「世界かんがい施設遺産」の認定機関でもあります。農林水産省の資料では、2025年10月時点で世界21か国の200施設が認定され、そのうち日本は56施設で世界最多です。割合にすると、全体の約28%を日本が占めます。

2026年は、日本が申請した4施設がすべて認定されました。10月14日にマルセイユで認定式が行われています。

| 施設 | 場所 |
|---|---|
| 葛西用水 | 埼玉県の羽生市・加須市・久喜市など12市町 |
| 小笠地域かんがい用水群 | 静岡県の掛川市・菊川市 |
| 日根荘大木のかんがい用水群 | 大阪府泉佐野市 |
| 崇神天皇陵堀 | 奈良県天理市 |
2025年10月時点の56施設に4施設を足すと、日本の認定は計60施設になります。ほかに認定の取り下げなどがなければという前提の、自分で数えた値です。
日本にとって何が変わるのか
農林水産省は、会長就任に次の効果を期待しています。
- 水田の水利用を評価するとき、洪水を防ぐなどの多面的機能も考慮すべきだという日本の主張を、国際社会へ発信する
- ICT(情報技術)を使った水管理や、水を節約する「間断かんがい」などの気候変動対策を、水田の国々へ広める
- 世界かんがい施設遺産の知名度を上げ、観光で遺産のある地域を活性化する
ただし、これは農林水産省が会長就任前に示した「期待される観点」です。実際にどの成果が出るかは、3年の任期のなかで見えてきます。
身近に見に行くには
認定された施設は、地域の用水路や堰(せき)など、いまも農業に使われているものが中心です。見学の可否や案内は施設ごとに違うので、行く前に各市町や管理者の案内を確かめてください。農林水産省の世界かんがい施設遺産のページに、全国の登録施設と概要資料が載っています。
国際機関の顕彰が地域に届く別の例は、ユネスコ識字賞の記事でも整理しています。足もとの水路の歴史を知ると、世界の水の話が具体的に見えてきます。
この記事は2026年10月19日までの農林水産省の発表をもとにしています。
出典:農林水産省「渡邉紹裕京都大学名誉教授がICID会長に就任」(2026年10月19日)、農林水産省「ICID第77回国際執行理事会及び第26回全体会議の対応方針」(2026年8月4日)、農林水産省「令和8年度世界かんがい施設遺産の認定について」(2026年8月21日)、農林水産省「世界かんがい施設遺産」

