読み書きの機会を身近に ユネスコ識字賞6事業の違いと成果

窓辺でノートに鉛筆で書く手元と、6つの識字支援の受賞を伝えるイラスト

家で使うことばを教室でも大切にする。近くの図書館に学ぶ場所をつくる。そんな工夫で読み書きの機会を広げた6事業が、2026年のユネスコ国際識字賞に選ばれました。受賞したのは、コロンビア、オランダ王国、ナイジェリア、レバノン、メキシコ、タイの取り組みです。

ユネスコは9月8日に受賞事業を発表し、9月21日の詳報でも活動を紹介しました。読み書きを本人の努力だけに任せず、言語や学ぶ場所を整えている点が共通します。6事業の違いと、公表された数字の意味を見ていきます。

目次

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母語と身近な場所が入口に

「識字」は文字を読めるかどうかだけでなく、読み書きを暮らしで使うことにも関わります。授業のことばが分からない、学校へ通う機会がなかった。そうした壁を小さくするため、受賞事業は地域や学ぶ人の事情に合わせて方法を選んでいます。

例えば、オランダのRutu Foundationによる「Language Friendly School」は、家庭の言語と学校で教える言語を一緒に生かす取り組みです。2019年に始まり、教員研修や学校の認証、地域との関わりを通じて広がってきました。家庭のことばを捨ててから学ぶのではなく、持っていることばを学びの土台にします。

コロンビア・ボゴタの「Escuelas LEO」は、先住民、ろう者、移民などへ多言語・異文化の学びを届けます。ナイジェリアの「Project PAL」は、太陽光発電の学習拠点を設け、まず地域のことばで学び、その後に英語へ移る方法を採っています。

机に向かい、ノートに鉛筆で書くチアパス州の学習者
メキシコの「Chiapas Puede」で学ぶ様子。先住民の言語や地域の文化に合わせた読み書きの機会を広げています。出典・写真:Gobierno del Estado de Chiapas / Secretaria de Educación / Chiapas Puede、ユネスコの受賞発表。
図解:家庭のことばを生かす、地域に学ぶ場所をつくる、学ぶ速さに合わせる
学ぶ環境を整える3つの工夫。受賞事業の取り組みをまとめた模式図です。出典:ユネスコの受賞事業紹介。

賞の歴史は1967年にさかのぼります。現在は、母語に基づく学びを重視する「世宗王識字賞」と、農村の成人や学校に通っていない若者などへの学びを支える「孔子識字賞」の二つがあり、各3事業が受賞します。各受賞者にはメダル、賞状、3万米ドルが贈られます。

6事業と数字の読み方

2026年の受賞事業が広げた学び方
国 主な工夫
コロンビア 地域の公共図書館を通じた多言語・異文化の学び
オランダ王国 家庭の言語も学校での学びに生かす
ナイジェリア 太陽光発電の学習拠点と習熟度に合わせた指導
レバノン 学校に通えなかった若者への速成教育
メキシコ 先住民の言語とスペイン語による地域の学習
タイ 地域の暮らしに役立つ多言語の読み書き

公表値は、同じ物差しで並べたランキングではありません。参加者数は学ぶ機会の広がりを、技能の到達率は別の成果を示します。期間や測り方が異なるため、数字の大きさだけで事業の優劣は決められません。

  • コロンビア:参加者は2024年の320人から2025年の443人へ増加。
  • オランダ王国:12か国の約70校で実施。開始以来、3万2,000人を超える生徒に届いたと報告。
  • ナイジェリア:2023〜2025年に8,500人へ支援。82%が暮らしに使う読み書きの水準に達したと報告。

メキシコの事業は州内121自治体で展開し、年間14万人超へ学びを届けると紹介されています。一方、非識字率を13.7%から4%へ下げるという数字は、今後の目標です。到達人数と、達成を目指す割合を分けて読むと、残る課題も見えてきます。

この先は学びの継続を見る

ユネスコの受賞発表では、世界で若者・成人7億3,900万人が基礎的な識字技能を持たず、その63%を女性が占めるとしています。6事業の受賞後も、地域や言語、学ぶ機会の差を埋める取り組みは続きます。

9月28日には中国・曲阜で孔子識字賞の式典が開かれ、ユネスコが10月9日に報告しました。レバノン、メキシコ、タイの3事業の実践を共有する場となりました。9月の発表を一度の表彰で終わらせず、方法をほかの地域へ伝える動きも進んでいます。

受賞発表には、6事業を共通の方法で追跡した長期比較の数字は載っていません。これから見たいのは、学んだ読み書きを使う機会が続くか、学校や仕事、地域の活動につながるかです。多言語の教室や身近な学習拠点が、学び直しの入口を支えています。

6事業の紹介は、ユネスコの公式動画でも確認できます。国や活動場所の違いが見え、本文の比較を具体的な場面と結び付けられます。詳しく読む場合は、その後の公式詳報をどうぞ。

動画:Presentation of UNESCO Literacy Prizes 2026 laureates(UNESCO、2026年9月8日)。主な工夫は上の比較表でも確認できます。

日本で身近なことばの学びを探す方には、熱海の対話交流型日本語教室も紹介しています。言語を教わるだけでなく、地域で話せる相手と出会う機会です。

この記事は2026年9月8日の発表をもとに、9月21日の詳報と10月9日の報告を確認し、同年10月15日に更新しています。

出典:ユネスコ国際識字賞の公式案内、曲阜での式典報告、ユネスコの受賞発表・公式詳報(本文中のリンク)。

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この記事を書いた人

国内外の前向きなニュースを、公的機関・研究機関・当事者の公式発表など確かな出典をもとに紹介しています。記事は元の発表を確認したうえで独自の日本語でまとめ、誤りが分かった場合は訂正します。

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