609件の推薦から、選ばれたのは100人。群馬県太田市の農業者清水由紀江さんが、国連食糧農業機関(FAO)の「農業・食料システムと農村振興における100人の女性ヒーロー」に選ばれました。農林水産省が2026年10月16日に発表しています。
表彰式は10月15日、イタリア・ローマのFAO本部で開かれました。何が評価されたのか、そして評価の中心にある「家族経営協定」とは何なのかを、公式の資料で整理します。
Googleで「イヤシロニュース」を優先ソースに追加追加 ›
何が起きたか|世界100人の1人に
この顕彰は、FAOが「国際女性農業従事者年2026」を記念して行うものです。農業・食料システムと農村振興に顕著な貢献をした女性100名を、世界各地から選びます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 推薦 | 131のFAO加盟国から609件 |
| 選出 | 100名 |
| 表彰式 | 2026年10月15日、ローマのFAO本部(世界食料フォーラム関連行事) |
| 表彰者 | 屈冬玉(QU Dongyu)FAO事務局長 |
推薦のうち選ばれたのは約6件に1件、率にして約16%です。推薦は1か国あたり平均で約4.6件、そこから100人に絞られた計算になります。日本からの選出は、農林水産省の発表で確認できる範囲では清水さんです。

清水さんは何をしてきたのか
農林水産省は、清水さんを農業経営の発展と、農村での女性活躍の推進に長年取り組んできた人として紹介しています。具体的には次の取り組みが挙げられています。
- 女性が意思決定に加わる機会を増やすこと
- 家族経営協定の普及で、経営の引き継ぎを円滑にすること
- 女性リーダーの育成、食育活動、包摂的な地域づくり
現在の役職として、太田市農業委員、農地中間管理機構の評議員、ぐんま農業委員会女性ネットワーク会長、ぐんま農業女性会議会長を務めています。2026年春には黄綬褒章も受章しました。FAOは、日本の農村で女性の地位向上を進めてきた農業リーダーとして紹介しています。

家族経営協定とは? 何を決めるのか
農林水産省は、家族経営協定を「経営方針や役割分担、働きやすい就業環境などについて、家族間の十分な話し合いに基づき取り決めるもの」と説明しています。家族の農業は、経営と生活の境目があいまいで、役割や労働時間、報酬が決まりにくく、不満が生まれがちです。協定は、そこを文書にして見える形にします。
令和6年度に締結した協定で多かった取決め内容は、次のとおりです。
| 取決め内容 | 割合 |
|---|---|
| 労働時間・休日 | 95.4% |
| 農業経営の方針決定 | 93.3% |
| 農業面の役割分担 | 88.1% |
| 労働報酬(日給・月給) | 74.1% |
| 経営移譲(継承を含む) | 54.3% |
一番多いのは、経営の方針ではなく「労働時間・休日」でした。家族の中で見えにくかった働き方を、まず言葉にする協定だと分かります。
数字で見る|どれだけ広がっているか
令和7年3月31日時点で、協定を文書で結んでいる農家は全国で59,731戸でした。前年より144戸(0.2%)の増加で、令和6年度中の新規の締結は1,451戸です。
増加は緩やかで、1年に結ばれる新規の数は、全体の2.4%ほどです。結ぶ理由は「認定農業者の共同申請のため」が23.7%、「親世代からの経営継承のため」が20.9%、「新規就農」が16.3%でした。
結びたい人はどうするか
手順は、次の3つの順で進めます。
- 家族で話し合い、役割・労働時間・休日・報酬の希望を出し合う
- 市役所の農政窓口や普及指導センターなどに相談する
- 決めたことを文書にまとめ、必要に応じて見直す

締結のときの主な相談先は、市役所職員が70.0%、都道府県の普及指導員が30.0%、農業委員が23.6%でした。まずは地元の市町村の農政窓口に、形式や進め方を尋ねるのが近道です。農林水産省の公式ページに、手引き資料と締結事例が掲載されています。
残る課題|顕彰の先にあること
協定を結ぶ農家は約6万戸ありますが、毎年の増え方は0.2%にとどまります。女性が経営に加わる形を広げられるかは、これからの課題です。今回の発表は、清水さんの取り組みを紹介するもので、取り組みの効果を数字で測った結果は示されていません。
国際機関が地域の活動を顕彰した別の例は、ユネスコ識字賞の記事でも整理しています。顕彰の裏にある数字を見比べると、評価の中身が具体的に見えてきます。
この記事は2026年10月16日の農林水産省の発表と、同省の調査(2025年12月26日)をもとにしています。
出典:農林水産省「FAO100人の女性ヒーローに清水由紀江氏が選出」(2026年10月16日)、農林水産省「家族経営協定締結農家数について」(2025年12月26日)、農林水産省「家族経営協定」

