和歌山県那智勝浦町の下里地区にある湿地で、2026年5月22日、地域住民ら23人が自然観察と保全活動に取り組みました。日本自然保護協会(NACS-J)が9月9日に公表した報告によると、ごみ拾いと草刈りを行い、計140kgのごみを回収しました。
この活動で注目したいのは、草を刈る場所と方法です。希少な植物が育つ区域では手鎌を使い、残すべき植物を刈らないように作業しました。多様なトンボが暮らす水辺を、地域で守り続けるための取り組みです。
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下里の湿地が選ばれた経緯
NACS-JとJESCOホールディングスは、2024年11月の連携協定をもとに、同社が町内に持つ森林だけでなく、町全体の重要な自然を調べてきました。専門家への聞き取りには、地元の熊野自然保護連絡協議会(熊自連)も協力しました。
調査では、希少性に加え、場所どうしが補い合うことを示す「相補性」、自然のつながりを示す「連続性」の3点で評価し、保全上重要な地域を約20か所確認しました。下里の湿地はその一つです。この数字は調査で把握した重要地域の数で、法令に基づく保護区の指定件数ではありません。
熊自連は以前から、この湿地で保全活動や観察会を続けてきました。一方、湿地の大切さが町内に十分伝わっていないという課題もありました。そこで同会が下里の湿地を推薦し、町全域へ活動を広げる最初の場所に選ばれたといいます。
町、JESCO、NACS-Jの三者は、行政と地域の連携、企業の人材や資金面の支援、自然保護の専門知識を組み合わせる協定を結んでいます。単発の清掃だけで終わらせず、地元の活動に町と企業も加わる枠組みを設けたことが、今回の背景にあります。
数字と作業から見る保全
当日は植物を観察してから、ごみ拾いと草刈りに移りました。先に生育する植物を知り、その場所に合う作業をする流れです。報告に出てくる数字は、次のように整理できます。
| 数字 | 報告で分かること |
|---|---|
| 23人 | 町長を含む役場職員8人、JESCO社員2人、熊自連4人、一般参加者らの合計 |
| 140kg | 今回の活動で回収したごみの総重量 |
| 5種 | 湿地で確認される和歌山県指定の絶滅危惧植物の種数 |
5種は、この湿地にいる全生物の種数でも、今回新しく見つかった植物の数でもありません。また、ごみ140kgという実績から、湿地全体のごみがなくなったことや、水質が改善したことまでは判断できません。
希少種が育つ区域で手鎌を使ったのは、保護したい植物まで一緒に刈り取らないためです。草刈りの量だけを増やすのではなく、何を残すかを見ながら作業する必要があります。地域で観察を重ねてきた人の知識が役立つ場面です。
当日はシオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ギンヤンマ、ハラビロトンボ、ショウジョウトンボなどが観察されました。NACS-Jは、浅瀬と深みの両方があり、水辺に草が茂る環境が、トンボの生息に適していると紹介しています。

写真でも、開けた水面と草が育つ部分が隣り合う様子が分かります。ただし、この写真だけで水深や水質を測ったり、個々の植物の種を特定したりはできません。今回の観察記録は、草刈りによってトンボが増えたことを示す前後比較の調査結果でもありません。
続けるために残る課題
活動報告では、湿地の価値を町内のより多くの人に知ってもらい、地域と連携して取り組む方針が示されています。三者協定の報告には、湿地の保全・再生や、町の「100年の森づくり」との連携なども計画として挙げられています。
今後確かめたいのは、作業を続ける人や機会を確保できるかに加え、植物やトンボの生息状況を継続して記録できるかです。参加人数や回収重量は活動の規模を示しますが、自然の状態が良くなったかを見るには、別に観察や調査を重ねる必要があります。
5月22日の活動は終了しています。原報告にある9月末の観察会への呼びかけも、現在の参加募集としては扱えません。次回の参加機会を探す場合は、NACS-Jのイベント案内で開催日と申込条件を確認してください。今回確認した報告には、次の開催日や保全効果の数値は記載されていません。
2026年10月17日更新。協定の締結日は3月23日付報告で1月15日とされ、9月9日付の活動報告には3月と記載されています。本記事は活動の経緯を両報告と1月16日の発表で確認しました。
出典:日本自然保護協会「下里の湿地での活動報告」「三者協定の報告」「協定締結の発表」。参加案内は同協会のイベント情報で確認できます。

